人生にエンドロールを

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シードラウンドの起業家と投資家がチームになるために大事なことを考えてみた

前元です。会社を創業して半年が経過しました。

maetake.hatenablog.com

 

プロダクトのことだけに全ての時間と力を注いでいた「プロジェクト」のような時期も終わりを迎え、「法人」としての力をつけるための仕事が増えてきました。その中でもファイナンスには多くの体力を使いますが、こればかりは楽な道が存在しません。

事業はいくらでも潰して立て直すことが可能ですが、資本政策は不可逆的なものですので、複雑に入り混じる多くの観点に頭を悩ませることになります。

弊社は現在シードラウンド真っ只中なのですが、先輩起業家、投資家の方にご意見をいただきながら足を動かしてみた先に感じたのは、このラウンドにおいて最も重要なのは如何にして投資家とチームになるかだということでした。

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PMFまで到達していないこのラウンドでは、企業の現在価値はほとんど未確定です。投資家と起業家がお互いの利益を得るためには、その後の協働においてお互いの役割を強く自覚し、また将来の企業価値に対して強い信念を共有する必要があります。

それはもはや単なるステークホルダーの域を超えた"チーム"なのだという実感と、投資家とチームになるために私たちが実行した方が良いと思ったことが、これから起業、資金調達をされる皆さまのお役に少しでも立てればと思い、記事にまとめてみました。

 

本記事はシードラウンドに重点をおいた内容になりますので、そもそも「シード」ってなんやねんという方は以下の記事を参考に全体感を掴んでみてください。

medium.com

  

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シードの資金調達は結婚だと思って意思決定をする

シードラウンドでリードイベンスター(*調達ラウンドをまとめるVCまたは個人投資家)として付いてくれた投資家と起業家たる我々の関係性は結婚に似ています。

左脳的に考えれば、投資をするという行為は、それによって生まれる将来の追加的なキャッシュフローを現在価値に割り戻し、投資にかかるコストと対比してプラスになるかマイナスになるかという判断に基付いて行われます。

右脳的には、単純に人としての相性の良さ、すなわち生涯に渡ってその人と付き合っていけるかという軸で判断をします。キャッシュフローをまだ生み出せていない段階で投資をするのですから、事業という箱が代わり、起業家という中身だけになってしまったとしても信じられるのかは、投資家にとって非常に重要な論点だというお話を聞きます。 

「大好きだけど将来は安定しなさそう...」「将来性はあるけど、好きが続くかわからない...」

そんな結婚の悩みと同じような感情がシードラウンドには渦巻いているのです。起業家からしても、株という最大の資産を手放すことになるので、将来に渡る関係性を十分に考慮した上で意思決定するという心構えを弊社では大事にしています。

 

投資家側のロジックを理解する

男女のキャリア感が異なるように、根本的には投資家と起業家も違うロジックの上でビジネスをしています。それにも関わらず、弊社も最初は自分本位な観点だけ述べて「投資してください!」とピッチをしていましたが、これでは相手の気を引くことはできません。そこで投資家、弊社の場合はその中でもVCからの調達をメインに進めているので、VCの構造を理解することから始めました。 

 

ざっくりは上記のような構造になっているのですが、VCも金融業の一種だということがわかります。LP(=VCへの出資者)から集めた資金をより効率的に使い、増やしたものを再分配することが求められるため、立場上責任ある意思決定が求められます。また、貸金ではなくキャピタルゲイン(=株等を売却して得られる売買差益)を求めているのは、シンプルにその方が大きく儲かる可能性があるからです。そのため、VCにとって小さく緩やかに成長する起業に投資をする理由はありません。

それを踏まえれば、投資家が最も欲しいのは、起業家の将来のキャッシュフローの大きさその確度を証明するトラクション(=成長する兆しであることがわかります。

実際にコミュニケーションをとって見ても、トラクションを話せるのと話せないのでは感触が大きく変わるので、どんな形でもMVPを作って見てユーザーの反応を回収することをおすすめします。

 

具体的な"WHY YOU"を伝える

シードラウンドでは、まだ未成熟な事業を成功に導くために、出資以外の支援も含むハンズオン投資が増えてきました。投資家によって得意とする支援内容は異なっていて、事業の壁打ち、人材調達、次の調達支援など様々です。

僕もざっくりと「こういった支援が...」といった話はしていましたが、その投資家である意味があまりなかったり、抽象的すぎると、投資家としても自分たちが入るお金以上の理由を見出せなくなります。

もちろん、シンプルにお金以外は求めていないのであればそれはそれでいいのですが、ハンズオンを期待する場合は、担当者の経歴、実績、人脈などを踏まえたより具体的な「自社のビジネスへの影響」を伝えられると良いと思います。

弊社はスマホARゲームの開発をしているのですが、企業タイアップに踏み切った時の営業支援や、次の大型調達を支援できるVC自体の資金調達力が欲しいため、多業種と繋がって居たり、場合によっては引っ張ってくるパワーがある方であれば、仕掛けに行くスピード感が出せるようになります。

 

初期の資本政策は、精緻さよりも意思を伝える基準として

事業のプロである起業家も、資金調達に関してはほとんど素人の状態から始まります。そのため、僕は資本政策を作る際に終わらないこれでいいんだろうか状態に陥りました。相場観を知らなかったり、不確定な未来に対する見立てを数字化する作業が不安の原因だったのですが、初期の資本政策で起業家が明確にしなければいけないのことは意外とシンプルであることに気がつきました。

① 自社のビジネスが累計でどれほどの調達を必要とするのか
② 調達のタイミング = 勝負所はいつ来るのか
③ 起業家のダイリューション(=1株の価値の希薄化)をどこまで許容できるのか
④ それらはどのスピードで展開していくのか

この部分だけがはっきりしていれば、将来に対する「絶対」はわからなくても、どのスケールとスピードのビジネスなのかの期待値が擦り合わせられます。資本政策は事業計画の映し鏡なので事業計画は必要ですが、エクイティでの勝負の仕方を伝えることによって、投資家は初回投資以降の自社のポジションニングをじっくり検討してもらいやすくなりました。

 

「競争環境」と「腹を割ること」が健全な交渉を生み出す

毎回感じるのですが、特にシードラウンドでは交渉力に関しては投資家が千枚上手です。 今にも資金ショートしそうな状態で投資家一人との交渉を進めると、基本的に起業家に拒否権はなくなります。投資家は起業家のビジネスを成功させることでリターンを得るので、明らかに起業家にとって良くない交渉が進むことはありませんが、あとがないとメンタル的にも相当やられます。

注意すべきこととしては、原則としてはオプションバリュー、つまり選択の自由度をを取りに行くことは大事なので、その資金調達によって狭まるであろう将来の可能性は認識しておく必要があります。 

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最も不幸なのは、起業家の意思の話が「ここ切られたらおしまい」という状況のせいで小さくまとまってしまうことです。投資家もそれが本当にビジネスの成功上に必要な内容なのであれば受け入れた方がいい訳なので、あとがないせいで起業家が妥協するという状況を回避することが大事です。

そのため、調達の交渉は複数進行して、投資家にも競争環境を作っておくことが全員にとっての健全な道です。

また交渉の余地もないが条件に納得できない場合は、思い切って投資家に「何をすればバリュエーションが上がるのか」「どうすればうちにいれてくれるのか」などははっきり聞いてしまった方がよかったです。ここの手の内を隠すことに投資家のメリットはないので、条件を聞き出してそれを最速で達成するっていうのもシンプルな調達方法なのではないでしょうか。

 

評判やテクニックに惑わされず、誠実な態度で臨む

投資家と起業家が住んでいるこの村はとても狭く、繋がりの強いコミュニティです。一度不誠実なことをしてしまうと、噂は比較的すぐに広まります。他の交渉先との進捗を盛り盛りで伝えていたり、事業展開に関して違うことを話していたりすると、その一社だけではなく全体からあまり良い評価を受けられなることもあるそうです。

これは起業家コミュニティに関しても同様で、「あのVCさんが良い悪い」という話をよく耳にしますが、これもあくまでその起業家にとっての解釈にしかすぎませんし、場合によっては又聞きを繰り返した果ての噂にしか過ぎないケースもあります。

どちらにせよ小手先の交渉術はあまり通用しないので、投資家とは誠実にコミュニケーションを取り、起業家内の噂も参考にしつつも自分の目で確かめるというスタンスを持たないと損をします。

 

物は言いようなので最終的には「納得感」の問題

ファイナンスにもセオリーは存在しているのでそれをきちんと抑えることは重要でした。是非、教科書だけでなく先輩起業家、知り合いの投資家から情報は集めたことは大きな資産です。しかし最終的には自社と投資家の問題なので、絶対的な「良い」資金調達は存在しないくらいの心構えでいることをおすすめします。

初期に大きく放出することはあまり良い手だとは言われませんが、弊社はゲームという非常にお金のかかる市場に参入する以上、初期にある程度まとまった資金がないと身動きが取れなくなります。ゲーム系のCVC(=事業会社の投資組織)から調達をすると、事業は助けてもらえますが他とのタイアップが少しやりにくくなるかもしれません。

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極論成功するのであればなんでも良くて、投資家と起業家が良いチームになるための意思決定であったという事実が何より大事なことなのだと思います。だから起業家は、その調達が将来に渡り何を意味するものなのかを理解して、納得感ある意思決定をすることだ大事なのだと肌で感じています。 

かくいう弊社もまだ第一回目のファイナンスを閉じておらず、資金調達の真っ只中にあります。ご興味持っていただけましたら、お気軽にご連絡ください。

弊社と親愛なる起業家の皆さまが、良い投資家に恵まれ次代を築きますように!

 

  

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