人生にエンドロールを

株式会社ENDROLL CEOのブログ。スタートアップのこと、XRのこと、ゲームのことなどをまとめていきます。twitterはこちら!https://twitter.com/shiitake526

拡張された世界の中で、村人Aに魂が宿る|ARスタートアップの振り返り

数ヶ月前、高校生向けのキャリア相談をしている友人に聞いたのですが、今の高校生の悩みは「やりたいことをやって生きるという言葉が逆にプレッシャー」とのこと。とても示唆深い話だと感じつつ、特に何か有用なコメントを残すこともなくその場は終わってしまいました。

僕はちょうど一年前の今日、AR × ゲームのスタートアップを立ち上げました。

そこでは、誰もが主人公になれるエンターテイメントの形を模索していて、逆説的になぜ人は主人公でなくなるのかを考えています。会社として価値を届けたいのは、今生きる世界に自分の居場所を見いた出せないような人で、まさにその悩みを打ち明けてくれた高校生のことだ感じました。

 

この記事はAR Advent Calendar 2018 - Adventarの12日目です。

 

何者でもない自分への目覚め

人一倍の才能と熱意を持ち、誰よりも真っ直ぐに努力を繰り返した主人公。そして、実は血筋として圧倒的な力を持っていることが後から発覚する。そんな漫画が流行したと思えば、次は才能を持たない凡人が成り上がる物語が注目を浴びています。

才能がないなら圧倒的な努力を。流行とは恐ろしいもので、小さな共感に始まり、連鎖の果てに世の中的な是すらも決めていきます。

自分は天才ではないことを自覚し、かといって誰よりも努力をするほどの熱量も持たぬこと認めてしまったのはいつ頃だったでしょうか。

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主人公である子供たちと村人Aである大人たち

子供の頃の夢はパイロットであり、スポーツ選手、はたまた転じてYoutuber。秘密基地を作り、ヒーローに姿を変え、地元を救う防衛軍を指揮する。これはまあデフォルメしていますが、遠からず「格好いい」に真っ直ぐな時間を過ごしてきた方が大半でしょう。

しかし、学力テスト、運動会、バレンタインなどの行事で自分の相対位置が鮮明になっていくにつれて「ああ、こんなものか」のリフレインが始まります。そのまま大人になってしまった私たちは、理不尽も不承知も受け入れる器を磨き、繰り返される言葉を「まあ、これでいっか」にすり替えていきました。

そこには主人公としての自分の姿はなく、まるで同じ言葉を繰り返し続ける村人Aかのように、日々非連続的に起こっているはずの全ての出来事を無視して「退屈さ」を自分に押し当ててしまうのは、誰にとっても不本意な結末であることに変わりはないでしょう。

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記号化され続ける認知の構図

なぜこんなことが起きるのかというと、人は細分化された膨大の情報を「記号」として捉えることにより処理しようとするからです。通勤路の風景も、友人の性格も、全てを個別化して考えることはできないから、ざっくりと記号にして抽象的に認識することでどうにか処理しようとします。そして記号化の最たる現象が「自分自身の記号化」です。

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これが自分らしさなのかとか、心の底では何をやりたいのかを考え出すと頭が痛いから、僕たちは考えなくても済むように、ざっくりと自分自身をこんなものだと思い込んでいきます。

記号化の裏には何かしらの共通のコンテキストが存在していて、そこで是とされる尺度に基づいて物事を共通化していきます。例えば、「学力の高い人が優秀な人である」といったように。

だとすれば、自分が相対優位にあり主役になれるコンテキストを見つけ出すことこそが、自分が主人公である世界の入り口なのではないかと僕は思うのです。

 

拡張された世界の中の、村人Aのセレンディピティ

ARゲームとして世界を拡張するということは、そこに新しいコンテキストを作り出すということでもあります。世界を謎解きの舞台に変えれば、見慣れた景色の一つ一つの粒が意味を持つように見えてくるし、友人と連携してミッションを攻略すれば、意外と自分が人を引っ張るタイプであることにも気付きます。これは新しい尺度を作ることによる「記号化」からの脱却です。

記号化されていた状態から生まれる新たな発見がユーザーにとってはセレンディピティであっても、それを「ARで複数の世界軸を作る」という行為を以って計画的に引き起こすことで、大人たちも主人公になれるエンターテイメントを創りたいのです。

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アリババグループのジャック・マーは、「自分は馬鹿だから起業するしかなかった」と語ります。謙遜であるにしても、世間の尺度の中でどう上に登るかではなく、自分が活躍できる舞台に身を置く場所を変えるという発想が、村人Aが主人公に姿を変える瞬間を生み出すのだと信じています。

ARエンタメが人の生き方を再定義するという確信

この「大多数の人村人Aになりがち現象」の根本的な問題は、画一化された是を持つことが社会的には合理的であるという結論をつけざるをえないことにあります。

だから人に新しい世界を提示するのは、小説であり、漫画であり、ゲームでありました。これまでもゲームエンターテイメントは、プレイヤーに新しい世界を届けてきましたが、これにも致命的な欠陥があると考えています。それが、現実とゲーム世界の分断です。ゲームで活躍することの現実への影響範囲が極めて小さいのです。既存のゲームでは、あくまでも「ゲームの中では主人公」の域を出ないのです。

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だから僕たちはあくまでも現実に根ざした上で世界をゲーム空間に包み込みます。普段目にしている場所で、普段接する友人と取り組むからこそ、村人Aに魂が宿るのだというのが私たちの信念です。

正直なところ、会社としてはエンターテイメント領域以外のことにも手を出そうとして、何かともやもやした気持ちを抱えていました。不安定だからこそ信念が試される年だったと思います。

それでもやっぱり僕たちが創りたいのは主人公になれるような世界で、価値を届けたいのはその高校生のような子なのです。

この一年でARの力で世界中をゲームに包み込むことの難しさを痛感しました。だから来年は、小さな場所から、それが部屋の中だけでも、特定の街の中でも、少しずつ僕たちの手が届く範囲を増やしていこうと色々仕込んでおります。

きっとパイロットも村人Aだから

自分より優れている人が輝いて見えてしまう一方で、当の本人は葛藤やコンプレックスをいただいていることは往々にしてあります。誰しもがそんな「普通」な側面を持っているのだから、普通であることを憂う必要は決してありません。

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最近の高校生の悩みを聞いた時に何もいうことができなかった僕ですが、もし今後そのような相談を持ちかけられることがあれば「この世界では普通な君が主人公で居られる世界があるからそこを探そう。」と極めて楽観的なアドバイスを送ることができる気がします。そんな世界を僕たちが作ろうとしているのですから。

 

かくいう僕は創業1年目の難しさを目の当たりにして、手と頭だけは止めぬように忙殺されております。「最近勢いでてきたんじゃない!」という周囲の悪意なきプレッシャーによって自分を見失わないように、泥臭く、強かに、そして自分の心が踊る世界の中心に身を置いて、2期目も精進して参りますので、引き続きよろしくお願いします!

 

 

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UIUXの制約を受け入れてユーザーと向き合うことで、スマホAR体験はもっと豊かになる

スマホARのUIUXに関しては、「まだ最適解が出てない」というのがAR開発者の総意だと思います。 

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スマホを通して提供できるAR体験が開発者の考える「ARらしさ」に遠く及ばないことは事実であり、理想と現実のギャップを新たなテクノロジーによって埋めようとする動きが盛り上がっています。同時に僕はそれと同じくらい、現段階の制約を受け止めアイデアによって解消しようとする働きかけも重要だと考えています。

今回は、弊社がエンタメの会社という立場からユーザーテストを繰り返して考えたスマホARのUIUXについてをまとめます。全く新しい概念を提唱しているわけではないのですが、本記事を通して「ユーザーにとって良いものは意外とシンプルかもしれない」ということをお伝えできればと思います。

 

ARKit2.0が可能にしたAR体験

物理的な現実世界の中に仮想敵な物体を「存在」させることがAR技術の完成であると僕は解釈しています。その点では、精度面での実用性の低さはまだあるものの、かなりのことがなんとなく出来るようになってきているように感じます。

ここでは、ARKit2.0までで実装可能になった主要機能は下記のものです。

・特徴点の検出による垂直・水平面の判定
・空間への保存
マルチプレイヤーでの共有
・3Dオブジェクトの検出とトラッキング

その他にも 環境マッピングやスケールの検出など、フォトリアルの追求も進んでいます。

上述している機能に関しては本記事の本旨ではないため解説を割愛しますが、下記の記事が大変参考になるため、必要であればご参照ください。

 

では、開発者を苦しめるものは何か

上述したように、ARらしさを追求するための多くの機能がすでに存在しています。(精度や処理速度によって実用性に欠ける側面はありますが)それでも優れたスマホARアプリが出てこないのには、開発者にとって以下のような制約が越えるべき壁として立ちはだかっているからだと考えています。

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スマホというフレームの制約

コンテンツがいかに優れていても、スマホの向こうにしか拡張された世界は広がっていません。デベロッパーは実際に目の前に広がっている空間すべてを使いたい一方で、ユーザーは極端に狭い視野でそれを体験することになります。

操作方法の制約

ARによってディスプレイ越しの世界は立体的な広がりを見せていますが、オブジェクトに干渉する際に私たちが触れなければいけないのは平面的なタッチパネルです。2m先にあるリンゴを手に取りたいと思った時に、ユーザーは物理的に歩み寄るべきかどうか、または長押しでリンゴを持ち上げられるかどうかは非常に悩ましい問題です。

ユーザーの周辺環境の制約

ただそこにオブジェクトを出すだけではなく、目の当たりにしている現実とのコンテキストを共有することでARの真価は発揮されます。ある程度どこでもできる体験を作ればARらしさを損ない、かといって渋谷のあらゆる場所にデベロッパーがコンテンツを設置していくというのも現実的に考えると不可能です。

 

スマホARアプリの課題感に関しては下記の記事でも詳しく取り上げられています。

  

制約を越えなくてもユーザーに届けられるものがある

しかし、これらの制約を越えることだけがスマホARのUIUXの発明ではないように思います。弊社は現状の技術によって再現できるARらしさにある程度割り切った姿勢を持った上で、開発者が納得しないクオリティであってもユーザーに当てて反応を確認するように心がけています。

そうすると不思議なことに、開発者にとって大事であった部分がユーザーにとっては気にならなかったり、想定外の楽しみ方をされることに気付きます。

弊社がいくつかのユーザーテストを通して得た最大の学びは

・身体感覚のある操作性
・リアルなコミュニケーション
・ユーザー自身の妄想の具現化

が、ユーザーのAR体験を豊かにするということです。

 

身体感覚のある操作性を強調した企画設計を

ユーザーはARオブジェクトヘ干渉する際に、これまでのタッチパネル操作の作法を踏襲しました。ピンチやタップ、フリックなどです。しかし極めてリアルなARオブジェクトを操作しているため多少のストレスが残ってしまいます。逆に近寄ってメモを読んでみるなどといった身体感覚の伴う操作がユーザーにとって一番面白さを感じる部分でした。

だから私たちは、そもそもタッチパネルを使わない、身体性を強調した操作も模索しています。例えば、音声操作や、カメラ照準による操作(スマホから出るライトをオバケに向けるような体験)、もしくは操作を完全に捨て見ることに特化したコンテンツなどです。

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ユーザー自身が妄想を具現化する行為を遊びに

デベロッパーが世界中のコンテキストを拾ってARオブジェクトを配置することは不可能なのだから、ユーザー自身にそのアクションを起こさせる設計をすると考えるとどうでしょう。

例えば、ARビデオ通話のGRAFFITYさんのようにユーザーがアクションを起こすこと自体に面白みを持たせることによってコストを抑えつつその場所ならではのAR体験を作り出すことができます。

水辺に船を浮かべたり木の枝に妖精を載せてみたりするのは、デベロッパーではなくユーザーの役割と考えると、コストを抑えつつ現実のコンテキストをきちんと保有したAR体験が加速すると同時に、自分自身の妄想を具現化していくという新しい遊び方の発明にも繋がります。

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ARを通して生まれたリアルなコミュニケーションをコアな価値に

まだARオブジェクトがマルチプレイヤーによって共有できなかった頃、同じ場所で同時に二人のユーザーに、ARで出力した3D謎解きゲームをやってもらったことがありました。すると二人は、勝手に競争をはじめ、また同じ空間をその場で共有していると錯誤しました。

ARはリアルな場所やモノに根付く分、コミュニケーションのハブになります。これは、これまでの広く希薄になりすぎてしまった体験を、温かみのあるリアルなモノに回帰させる力があると感じました。ARの品質よりも、いかに交流を生み出すかといった設計に最大の価値を置くことで、ユーザーが触れるには十分なコンテンツが仕上がると僕は確信しています。

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ユーザーが求めるAR体験は意外とシンプルなものかもしれない

エンターテイメントは常にあらゆる制約を遊びに変えてきました。長すぎるロード時間をいかに短くするかではなく、ユーザーが冒険のヒントを得られる学びの時間に変えるという発想をしたように、私たちのアイデアは制約を受け入れることから始まります。

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そして、受け入れた制約をアイデアで埋めようと考えると、ユーザーにとって一番大事なものは何かが見えてきます。それは時としてARらしさとは逆向するものかもしれませんが、ユーザーが喜んでくれて、ARがよりフレンドリーなものになることが今一番必要だと考えています。

制約を受け入れて、ユーザー中心に作られたARサービスのUXは意外とシンプルなものかもしれません。

エンタメコンテンツだからできるアプローチも多分に含んでいますが、 デベロッパー全体でスマホARのUIUX問題に取り組み、1日でも早くユーザーに豊かなAR体験を届けたいと願っております。

 

  

余談ですが、先日USAではゴースト&ガンというARアプリが一部で流行ってたという話が耳に入ってきましたが、これは自分の周りに出てくるゴーストを撃ち落とすというまさに身体感覚だけにフォーカスしたARゲームアプリです。

ゴースト&ガン

ゴースト&ガン

  • Turbo Chilli Pty Ltd
  • ゲーム
  • 無料

開発者から見ると決してARとは言いにくいこのゲームでも、ユーザーからすると新しい遊びとして可能性を感じるものであったに違いありません。

 

 

スタートアップの共同創業者を選ぶ際に大事にしたい4つの質問

一般的にスタートアップには共同創業者がいる方が良いと言われます。

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共同創業者がいる(いた)会社といえば、有名どころだとMicrosoft, Apple, Google, Facebook, Airbnbなどがそうですし、日本でもGREE, コロプラ, DeNAなども挙げられますね。

共同創業が是とされている背景はシンプルで、社長と同じ目線で事業を推し進めようとする人がいることは、スタートアップに必要な膨大な情報処理→意思決定の速度を引き上げるための大事な基盤になるからです。何より、かなりの頻度で死にたくなるのでそういう時に支えあえるところも素敵です。本当に。

なぜ共同創業が良いのかについては、下記のスライドシェアを見ると良くわかるのでご参考までに。

共同創業者がいることはあらゆる場面において圧倒的な武器になります。その反面、創業時のチームというのは再編することが非常に難しく、スタートアップが失敗に終わる最大の原因がチームにあることもまた事実です。

だからこそ、共同創業者選びは社長として最初に取り組むべき重要な仕事です。

弊社ENDROLLは現在の共同創業者の三人でやれることが前提で創業したので、創業時はこのトピックについて考える時間をあまり取りませんでした。それができる僕の環境はきっと恵まれていたのだと思います。

今回は、創業してから今日までの経験を振り返って思う共同創業者選びにおいて重要な観点をまとめてみましたので、お役に立てれば幸いです。

 

プロダクトが変わっても機能するチームだろうか

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スタートアップはアイデアと共に始まることが多いと思います。もちろんそのプロダクトを片手に未来を切り開いていく覚悟を誰もが持っていますが、当初は出会い系サービスであったYoutube動画共有サイトへと転じたように、スタートアップのプロダクトはピボットを重ねるものです。

創業者がプロダクトの専門性を持っていることは非常に大きな強みであることは間違いありませんが、ピボットをした時に全く機能しなくなってしまうメンバーは避けた方が良いかも知れません。できることであれば、ビジネスにしてもエンジニアリングにしても、ある程度汎用的に取り組めるだけの基礎力が高いメンバーを選ぶことをおすすめします。

また、共感の軸がプロダクトではなく創りたい未来などの抽象的なレイヤーにあることも重要ですね。最終的な目的に対する解像度が同じチームなら、登り方に関しては柔軟に変更ができることでしょうから。

 

何よりも進化することに優れたチームだろうか

f:id:Maetake:20180807105741j:plainスタートアップはジャイアントキリング以外の生き方を知りません。優れたアイデアだけでは勝ち上がることはできず、競合他社には想像できないような速度で成長を遂げるからこそ市場を切り拓くことができます。

今どれだけスキルがあるとか、どれだけのキャリアを積んできたかに創業者の本質はなく、どれだけの速度で成長を遂げてきてここにいるのかを推し量ることが重要です。会社の天井は経営者が決めるとよく言いますが、それが真なのであればスタートアップの成長曲線に比例する形で進化をするチームであらねばならないということです。

未来を見た時に誰よりも成長している姿が描けるメンバーが近くにいるのであれば、その人はきっと口説くべき人材なのだと思います。

 

「何でもできそうな時期」を越えても前を向けるチームだろうか

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これ、僕たちも気をつけなければならないのですが、そもそも創業期や事業がうまく回っているような時期に問題はあまり起きないんですよね。特に創業期にスタートアップに立ち込める「何でもできる感」は魔法のようで、どんなハードワークにも耐えることができます。一方で、現実的にキャッシュフローが作れない時期、調達ができない時期が長く続くとこの魔法はきっと解けてしまいます。

美味しいご飯も食べられない、休みも取れない、趣味にも時間を割けない。そんな現実の中でも前を向ける人は、世界にも数えるほどしかいないのではないのでしょうか。それに耐えられるだけ未来に強いこだわりをもっているかも大事ですが、過去の経験からレジリエンスを測ることも重要です。

そして、口説きたいメンバーがそういった理由を持っていないのであれば、彼らを本気にさせるのもまた創業社長の仕事です。

 

衝突を乗り越えられる理由があるチームだろうか

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共同創業者が会社に対しての目線を同じ高さであるほど、衝突する回数は増えます。全員にとって唯一無二の自分が立ち上げた会社になるのだから当然です。右脳でも左脳でも衝突を何度も繰り返します。先に述べたように、創業メンバーが欠けるということは会社にとってとても大きな損害であるため、衝突がチームに致命的で修復不可能な亀裂が入ってしまうことを恐れて衝突ができなくなることもあるでしょう。

しかしそれでは会社は良い方向に進まない。だからこそ何度ぶつかってもこのチームは大丈夫だと思える理由を持つことは本当に大切です。気の知れた友人で人として大好きだとか、長年仕事を一緒にしてきて任せられる強さを理解しているだとか、いくつかパターンはありますが、創業者と衝突をする未来を想像して、それでも前を向いている明日が見えるのであればそれはきっと最高のパートナーです。

 

まとめ等

この4つの質問がこれから起業される方、今まさにチームを作っている方にとって少しでも気付きのあるものになれば幸いです。仲間探し、楽しいですよね!

 

ちなみに弊社ENDROLLは、学生時代から公私を共にした友人と創業しました。エンタメ業界という意味ではよそ者が集まっていますが、各々が自分の領域の中でチャレンジを繰り返して成長を重ねている良いチームだと自信を持って言えます。

とはいえ現時点を見ると未熟者の集まりであることに変わりはないため、自分たちの未来を楽しみにしつつ、今後さらに良いチームになれるよう初期から文化作りにも力を注いでいます。

弊社は絶賛採用活動中でして、もし少しでも興味を持ってくださる方がいれば、下記フォームより気軽にご連絡ください!

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※ENDROLL社についてはこちらをお読みください。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。それではまた! 

 

シードラウンドの起業家と投資家がチームになるために大事なことを考えてみた

前元です。会社を創業して半年が経過しました。

maetake.hatenablog.com

 

プロダクトのことだけに全ての時間と力を注いでいた「プロジェクト」のような時期も終わりを迎え、「法人」としての力をつけるための仕事が増えてきました。その中でもファイナンスには多くの体力を使いますが、こればかりは楽な道が存在しません。

事業はいくらでも潰して立て直すことが可能ですが、資本政策は不可逆的なものですので、複雑に入り混じる多くの観点に頭を悩ませることになります。

弊社は現在シードラウンド真っ只中なのですが、先輩起業家、投資家の方にご意見をいただきながら足を動かしてみた先に感じたのは、このラウンドにおいて最も重要なのは如何にして投資家とチームになるかだということでした。

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PMFまで到達していないこのラウンドでは、企業の現在価値はほとんど未確定です。投資家と起業家がお互いの利益を得るためには、その後の協働においてお互いの役割を強く自覚し、また将来の企業価値に対して強い信念を共有する必要があります。

それはもはや単なるステークホルダーの域を超えた"チーム"なのだという実感と、投資家とチームになるために私たちが実行した方が良いと思ったことが、これから起業、資金調達をされる皆さまのお役に少しでも立てればと思い、記事にまとめてみました。

 

本記事はシードラウンドに重点をおいた内容になりますので、そもそも「シード」ってなんやねんという方は以下の記事を参考に全体感を掴んでみてください。

medium.com

  

投資、採用関係のご相談は下記からご連絡ください!

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シードの資金調達は結婚だと思って意思決定をする

シードラウンドでリードイベンスター(*調達ラウンドをまとめるVCまたは個人投資家)として付いてくれた投資家と起業家たる我々の関係性は結婚に似ています。

左脳的に考えれば、投資をするという行為は、それによって生まれる将来の追加的なキャッシュフローを現在価値に割り戻し、投資にかかるコストと対比してプラスになるかマイナスになるかという判断に基付いて行われます。

右脳的には、単純に人としての相性の良さ、すなわち生涯に渡ってその人と付き合っていけるかという軸で判断をします。キャッシュフローをまだ生み出せていない段階で投資をするのですから、事業という箱が代わり、起業家という中身だけになってしまったとしても信じられるのかは、投資家にとって非常に重要な論点だというお話を聞きます。 

「大好きだけど将来は安定しなさそう...」「将来性はあるけど、好きが続くかわからない...」

そんな結婚の悩みと同じような感情がシードラウンドには渦巻いているのです。起業家からしても、株という最大の資産を手放すことになるので、将来に渡る関係性を十分に考慮した上で意思決定するという心構えを弊社では大事にしています。

 

投資家側のロジックを理解する

男女のキャリア感が異なるように、根本的には投資家と起業家も違うロジックの上でビジネスをしています。それにも関わらず、弊社も最初は自分本位な観点だけ述べて「投資してください!」とピッチをしていましたが、これでは相手の気を引くことはできません。そこで投資家、弊社の場合はその中でもVCからの調達をメインに進めているので、VCの構造を理解することから始めました。 

 

ざっくりは上記のような構造になっているのですが、VCも金融業の一種だということがわかります。LP(=VCへの出資者)から集めた資金をより効率的に使い、増やしたものを再分配することが求められるため、立場上責任ある意思決定が求められます。また、貸金ではなくキャピタルゲイン(=株等を売却して得られる売買差益)を求めているのは、シンプルにその方が大きく儲かる可能性があるからです。そのため、VCにとって小さく緩やかに成長する起業に投資をする理由はありません。

それを踏まえれば、投資家が最も欲しいのは、起業家の将来のキャッシュフローの大きさその確度を証明するトラクション(=成長する兆しであることがわかります。

実際にコミュニケーションをとって見ても、トラクションを話せるのと話せないのでは感触が大きく変わるので、どんな形でもMVPを作って見てユーザーの反応を回収することをおすすめします。

 

具体的な"WHY YOU"を伝える

シードラウンドでは、まだ未成熟な事業を成功に導くために、出資以外の支援も含むハンズオン投資が増えてきました。投資家によって得意とする支援内容は異なっていて、事業の壁打ち、人材調達、次の調達支援など様々です。

僕もざっくりと「こういった支援が...」といった話はしていましたが、その投資家である意味があまりなかったり、抽象的すぎると、投資家としても自分たちが入るお金以上の理由を見出せなくなります。

もちろん、シンプルにお金以外は求めていないのであればそれはそれでいいのですが、ハンズオンを期待する場合は、担当者の経歴、実績、人脈などを踏まえたより具体的な「自社のビジネスへの影響」を伝えられると良いと思います。

弊社はスマホARゲームの開発をしているのですが、企業タイアップに踏み切った時の営業支援や、次の大型調達を支援できるVC自体の資金調達力が欲しいため、多業種と繋がって居たり、場合によっては引っ張ってくるパワーがある方であれば、仕掛けに行くスピード感が出せるようになります。

 

初期の資本政策は、精緻さよりも意思を伝える基準として

事業のプロである起業家も、資金調達に関してはほとんど素人の状態から始まります。そのため、僕は資本政策を作る際に終わらないこれでいいんだろうか状態に陥りました。相場観を知らなかったり、不確定な未来に対する見立てを数字化する作業が不安の原因だったのですが、初期の資本政策で起業家が明確にしなければいけないのことは意外とシンプルであることに気がつきました。

① 自社のビジネスが累計でどれほどの調達を必要とするのか
② 調達のタイミング = 勝負所はいつ来るのか
③ 起業家のダイリューション(=1株の価値の希薄化)をどこまで許容できるのか
④ それらはどのスピードで展開していくのか

この部分だけがはっきりしていれば、将来に対する「絶対」はわからなくても、どのスケールとスピードのビジネスなのかの期待値が擦り合わせられます。資本政策は事業計画の映し鏡なので事業計画は必要ですが、エクイティでの勝負の仕方を伝えることによって、投資家は初回投資以降の自社のポジションニングをじっくり検討してもらいやすくなりました。

 

「競争環境」と「腹を割ること」が健全な交渉を生み出す

毎回感じるのですが、特にシードラウンドでは交渉力に関しては投資家が千枚上手です。 今にも資金ショートしそうな状態で投資家一人との交渉を進めると、基本的に起業家に拒否権はなくなります。投資家は起業家のビジネスを成功させることでリターンを得るので、明らかに起業家にとって良くない交渉が進むことはありませんが、あとがないとメンタル的にも相当やられます。

注意すべきこととしては、原則としてはオプションバリュー、つまり選択の自由度をを取りに行くことは大事なので、その資金調達によって狭まるであろう将来の可能性は認識しておく必要があります。 

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最も不幸なのは、起業家の意思の話が「ここ切られたらおしまい」という状況のせいで小さくまとまってしまうことです。投資家もそれが本当にビジネスの成功上に必要な内容なのであれば受け入れた方がいい訳なので、あとがないせいで起業家が妥協するという状況を回避することが大事です。

そのため、調達の交渉は複数進行して、投資家にも競争環境を作っておくことが全員にとっての健全な道です。

また交渉の余地もないが条件に納得できない場合は、思い切って投資家に「何をすればバリュエーションが上がるのか」「どうすればうちにいれてくれるのか」などははっきり聞いてしまった方がよかったです。ここの手の内を隠すことに投資家のメリットはないので、条件を聞き出してそれを最速で達成するっていうのもシンプルな調達方法なのではないでしょうか。

 

評判やテクニックに惑わされず、誠実な態度で臨む

投資家と起業家が住んでいるこの村はとても狭く、繋がりの強いコミュニティです。一度不誠実なことをしてしまうと、噂は比較的すぐに広まります。他の交渉先との進捗を盛り盛りで伝えていたり、事業展開に関して違うことを話していたりすると、その一社だけではなく全体からあまり良い評価を受けられなることもあるそうです。

これは起業家コミュニティに関しても同様で、「あのVCさんが良い悪い」という話をよく耳にしますが、これもあくまでその起業家にとっての解釈にしかすぎませんし、場合によっては又聞きを繰り返した果ての噂にしか過ぎないケースもあります。

どちらにせよ小手先の交渉術はあまり通用しないので、投資家とは誠実にコミュニケーションを取り、起業家内の噂も参考にしつつも自分の目で確かめるというスタンスを持たないと損をします。

 

物は言いようなので最終的には「納得感」の問題

ファイナンスにもセオリーは存在しているのでそれをきちんと抑えることは重要でした。是非、教科書だけでなく先輩起業家、知り合いの投資家から情報は集めたことは大きな資産です。しかし最終的には自社と投資家の問題なので、絶対的な「良い」資金調達は存在しないくらいの心構えでいることをおすすめします。

初期に大きく放出することはあまり良い手だとは言われませんが、弊社はゲームという非常にお金のかかる市場に参入する以上、初期にある程度まとまった資金がないと身動きが取れなくなります。ゲーム系のCVC(=事業会社の投資組織)から調達をすると、事業は助けてもらえますが他とのタイアップが少しやりにくくなるかもしれません。

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極論成功するのであればなんでも良くて、投資家と起業家が良いチームになるための意思決定であったという事実が何より大事なことなのだと思います。だから起業家は、その調達が将来に渡り何を意味するものなのかを理解して、納得感ある意思決定をすることだ大事なのだと肌で感じています。 

かくいう弊社もまだ第一回目のファイナンスを閉じておらず、資金調達の真っ只中にあります。ご興味持っていただけましたら、お気軽にご連絡ください。

弊社と親愛なる起業家の皆さまが、良い投資家に恵まれ次代を築きますように!

 

  

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XRでゲームと世界を繋ぐ会社を創りました。

はじめまして、前元と申します。

20171212日に、ENDROLLというXRゲームの会社を設立しました。創業メンバーにゲーム業界の出身者はいません。業界の先輩方にお会いする度に、呆れが混じりの応援のお言葉をいただいております。

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起業の前は「いかに退屈さから逃れるか」という問いだけが頭を支配していました。時間を持て余していたわけでも、仕事が面白くなかったわけでもないのですが、明日自分の身に起きる出来事に予測がついてしまう毎日は僕にとって何よりもの毒でした。

退屈に押しつぶされゲームを起動するように始まった起業は、魔王に恨みなんてないはずなのに勇者になりきり剣を振るう時の盲目さによく似ていたように思います。 

僕の動機は退屈さから来ていて、世の中の退屈が無くなればいいと思っているのですが、なぜゲームなのかとか、なぜXRなのかと聞かれることも増えて来たので今日はそんなお話をしようと思います。

 

村人Aに魂を吹き込む

昔から、人生はRPGのようなものだと思い続けていました。魔王を倒すことに奮闘しているように見えて、欲求を満たすのはその過程にある交流や成長や達成です。成功を納めた起業家も、課題の向こうにある価値を追い求めていたのではなく、その行為でしか高次になりすぎた自分の欲を満たすことができなかっただけに過ぎません。

そういった意味では魔王も夢も目標も、欲求を満たすために消費されるための存在なのかもしれません。

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一方で、100人の起業家がいれば100のミッションが存在するように、当然人の欲求は個別化されています。画一的なルールが「是」を決めてしまうことで、個別化された欲求を満たせない人は必ずでてきます。そうやって、いつしか自分が世界の中心からいなくなってしまった「村人A」に主人公としての魂を吹き込むことが私たちのミッションです。ゲームの主人公って一番退屈してなさそうじゃないですか。

 

ゲームと世界のインターフェイスをデザインする

で、具体的に何をするのかというと、ゲームと世界をごちゃごちゃにしてしまおうというのが弊社の考えです。ゲームには多様な目的とルールがあり、シミュレーションという形で新たな世界を僕たちに与えてくれます。社会の尺度から外れてしまった非才にも天才にも、自分の心が踊る世界感を与えてくれます。

でもどれだけ熱中したゲームにも、所詮はゲームだと感じてしまう瞬間は訪れます。僕たちはその瞬間を奪い去りたい。

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XRにおける究極のインターフェイスデザインは、バーチャルな世界と現実を認識下で同質にすることにあります。所詮ゲームだと思わせないほどにユーザーをゲームに没入させ、それを確かな「体験」に昇華させることが私たちのアプローチです。

 そしてゲームと世界の壁をとり壊すのは、以下の要素だと考えています。
・多感覚インタラクション
・フレームを持たない世界の描写
・自分の認知に溶け込むシナリオ

XRは技術的なアプローチが注視される傾向にありますが、シナリオがもたらす没入感に僕たちは最も重きを置いていて、技術は二の次だと考えています。XRで表現できる世界のシナリオはスマホのフレームの中には決して収まらないものだからです。

  

さようなら僕の退屈

世の中が急速に便利になって来て、「OK Google」も「Hey Siri」もなんだかんだで馴染んで来ている今、正直今後やることなくなるなーと思います。社会を良くするという命題は、人を高揚させ高次な欲求を満たしてくれますが、消費者たる私たちは意外と便利って退屈なんだろうなと。

93年生まれなので、昔は良かったなどという論調を持ち込む気はありません。しかし、働かなくてもいいくらい便利な世の中を作るために仕事をしていたはずなのに、退屈を紛らわすために、もしくはお金を貯めるために労働に従属していた自分への違和感を、この会社を通して払拭したいなと思っています。

ゲームが世界と交わった時、今の価値尺度の中で主人公になれない村人Aにも、世界を導くドキドキとワクワクが訪れますように。

 

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